こんにちは,きー坊です。
3Dプリンターの素材(フィラメント)に関する前回の記事は読んでいただけでしょうか。
まだ読んでいないという方はぜひこちらからご覧ください。
前回,前々回では3Dプリンターの基礎的な知識を扱ってきました。
まだご説明できていないこともたくさんありますが,とりあえず触ってみた方が学べることも多いと思います。
ということで今回の記事では,初めて3Dプリンターを購入する方向けのおすすめ機種を4つご紹介しようと思います。
現在は家庭用の3Dプリンターもかなり増えてきて,数年前に比べるとかなりお手ごろな値段で購入でき,しかも個人用途ならば十分な性能を発揮してくれる機種がたくさんあります。
今回おすすめの3Dプリンタを選定するにあたり,何かしらの基準を設ける必要がありました。予算は学生や社会人など立場によって大きく変わってしまうので難しいのですが,大学生でもアルバイト代を少し貯めれば買えるであろう,10万円という金額を指標にしてみたいと思います。
初心者におすすめな3Dプリンターって?
光造形方式 vs 熱溶解積層方式(FDM方式)
以前の記事で,一般的な3Dプリンターには大きく分けて光造形方式と熱溶解積層方式(FDM方式)の2種類があるというお話をしました。
個人的には,初めて3Dプリンターを買いたいという方にはFDM方式をおすすめします。なぜなら,はじめは色々なことを試しながら手軽に印刷できることが重要だと考えているからです。
例えばフィギュアを造形するには光造形方式の方が向いているなどそれぞれ特徴はあるのですが,後処理の手間や材料のコストなどを考えると,やはり導入としてはFDM方式の方がハードルが低く楽しめると思います。
OOTB vs 組み立て式
また,3Dプリンターを購入するにあたって出てくる選択肢として,既に組みあがっているモデルと組み立て式のモデルがあります。
(※AmamzonやAliExpressの商品ページの中には,Out of the box (OOTB)と表記されている場合がありますが,これは「箱から出してすぐ使える」という意味で使われています。また,単純に同じモデルで組みあがっているものと組み立て式を選択できる場合もあります。)
これに関しては一長一短あるため,どちらの方が良いということはありません。
今回の記事では2機種ずつご紹介しますので,それぞれの利点を聞いたうえでご自身で判断していただければと思います。
簡単にそれぞれの特徴や,向いている人をご説明します。
既に組み上がっている3Dプリンター
メリット
- 箱から出し,梱包材を取り除いたらすぐに使える状態になるので,非常にお手軽
- 箱型の筐体を持っているモデルが多く,放熱管理がしやすい(ABSを印刷する際など)
デメリット
- 故障した際に,替えの部品があまり売っていないので,メーカーに送って修理依頼をしなければ直せない場合がある
- カスタマイズの幅がほとんどない
こんな人におすすめ
時間があまりとれない人や,とりあえず3Dプリンターを使ってみたいという方におススメです!
組み立て式の3Dプリンター
メリット
- 大人の工作感覚でモノづくりを楽しめる
- 作りながら3Dプリンターの構造を学べるので,故障のトラブルに対処しやすい
- 有名なモデルであればカスタマイズパーツが多く出回っており,自分好みに改造できる
デメリット
- 説明書が不十分な場合には,自分で少し予測しながら組み立てなければならないことがある
- カバーがないオープン型のモデルが多く,後から自分で自作する必要が出てきたりする(印刷する素材がPLAやTPU等の反りづらいものに限定されていれば問題なし)
こんな人におすすめ
工作が好きだったり,自分でトラブルまで対処できるようになりたいという方におススメです!
OOBTでおすすめの3Dプリンター2選!
まずは,箱から取り出したらすぐに使えるタイプの3Dプリンターを2つご紹介しようと思います。
FLASHFORGE “Adventurer3” シリーズ
記念すべき1つ目の3Dプリンターは,FLASHFORGE社のAdventurer3という機種です。
おススメする一番の理由は,バランスの良さです。
ある意味で特徴のない3Dプリンターとも言えますが,欠点と呼べる欠点が見当たらないところが,初めて3Dプリンターを購入する方に向いている最大の理由です。
Adventurer3の良いところ
特徴がないとは言いましたが,以下に挙げるような”無難な構成”を実現するのはなかなか難しいことだと思います。
- 造形の安定性
- 基本的なメンテナンスの容易さ
- 3Dプリントをする際に欠かすことのできない,スライサーソフトの分かりやすさ
- 大きすぎない筐体のサイズ
Adventurer3はこれらを兼ね備えたバランス型の3Dプリンターです。
Adventurer3で出てくる可能性がある不満要素
念のため,使っているうちに現れるかもしれない不満点についても触れておこうと思います。
- スプールホルダー(フィラメントの設置場所)が収納式であること
- 造形サイズがあまり大きくないこと
- TPU(弾性素材)が印刷できないこと
・スプールホルダーが収納式
スプールホルダーが収納式であることから,セットできるスプールサイズが500gに限られることや,他社製品のフィラメントが使用しにくい,といった問題が生じます。
この点については,FLASHFORGE純正のフィラメントでも十分に使える製品ですし,収納しながら印刷できることは,全体としてコンパクトに収まってくれるという利点でもあるので,とりあえず3Dプリンターを買ってみたい人には問題にならないと思います。
・造形サイズが大きくない(150mm×150mm×150mm)
造形サイズについては「人による」としか言えませんが,日常を便利にする小物やフィギュア,小型のロボットなどの用途であればほとんど問題になることはないと思います。
大きくないとはいっても小さいわけでもないので,「印刷したいモデルが決まっていて,それがこの造形範囲内に収まらない」という事情がない限り心配する必要はないと思います。
・弾性素材(TPU等)が印刷できない
TPUが印刷できないという点については,そもそも弾性素材のモノを印刷する目的で購入する人にとっては論外なのですが,そうでなければPLAやABSといった素材だけでも十分,多種多様なモノを作ることができます。
ただ,最初の一台で色々試したいという方には少し不満になる可能性があるかもしれません。
Adventurer3 補足
また,Adventurer3には無印,LITE,S,Xというラインナップがあり,それぞれ公式サイトに違いが載っていますのでお好きなものを選択していただければ良いと思いますが,迷ったらとりあえず無印で問題はないと思います。
詳しい仕様については,公式サイトを見ていただければ幸いです。
販売価格:63,800円(税込)
【公式販売ページ】
QIDI Technology “i-mates”
続いてご紹介する3DプリンターはQIDI TECH社のi-matesという機種です。
現時点(2021年6月)でかなり新しいモデルで,発売日は2021年1月です。
そのため,それまでのモデルで生じた問題を改善する企業努力がなされており,完成度の高い機種となっています。
磁気性の軟性ビルドプレートとなっており,強力な磁石によって印刷時の平面は担保されながらも,モデルを剥がす際にはプレートを曲げて綺麗に取ることができるようになっています。
また,標準的な0.4mmのノズルに加えて0.2mmのエクストルーダーが付属することもポイントが高いかもしれません。
i-matesの良いところ
こちらの製品の特長は圧倒的なコスパの良さです。
この造成サイズ,造形精度,静音性,使用可能素材の幅広さを備えていながらこのお値段はかなり優秀だと思います。
・造形サイズ
i-matesの造形サイズはかなり大きく,先ほどのAdventurer3との比較がこちらです。
Adventurer3:150mm×150mm×150mm (cf. 3,375cm^3)
i-mates :260mm×200mm×200mm (cf. 10,400cm^3)
造形スペースをフルで使うことは珍しいので体積はあまり関係ありませんが,最大長さが26cmまで印刷できるというのはメリットと言えます。
・造形精度と静音性
安価な中国製3Dプリンターの中には,造形精度を犠牲にしているものや,制御基板をケチってモーター駆動音がうるさい機種などもありますが,趣味の用途や製品の試作には十分な精度を出すことができます。
一度キャリブレーションをしてしまえばノズル交換をするまでほとんど調整なしで造形することができ,きちんとしたフィラメントを使用していれば印刷が失敗することもほとんどありません。
(※3Dプリンターの機種によらず,ノズル交換後は高さが変わっている可能性が高いので,その都度キャリブレーションを推奨します。)
実際にはそこまで細かく使うことは少ないのですが,公式にはz方向精度が最小で0.05mmとなっています。
駆動時の騒音に関して,ファンの音は少し気になりますがモーター駆動音はかなり静かです。なお,ファンの音についてもカバーをしてしまえばほとんど気にならない程度です。
・使用可能フィラメント
よくあるPLAやABS,PETGといった素材に加え,TPUのような弾性素材も造形することができます。
また,同じノズルで別の素材を印刷しているとノズルが詰まりやすいともいわれていますが,こちらの機種ではそのようなトラブルもほとんど起こりません。
i-matesのデメリット
ここまで,かなり良いところばかり挙げてきましたが,もちろん不満な点もいくつか挙げられます。
- 3Dプリンターの機体が大きい
- 標準装備のスプールホルダーが微妙
- スライサーソフトが少し不便(?)
・機体が大きい
これに関しては造形サイズとトレードオフ関係にあるため,ある程度仕方がないのですが,初めて3Dプリンターを買う方がこちらの機種を見ると,かなり圧迫感を覚えてしまうかもしれません。
ご自身の部屋のサイズや置く場所を考えたうえで,購入を検討してみて下さい。
・スプールホルダーが微妙
私自身,こちらのモデルを使っていて遭遇したことなのですが,使用フィラメントの相性によっては造形が止まってしまう場合があります。
というのも,標準装備のものは単純にアルミパイプにスプールをセットしているだけなので,1kgのフィラメントを使用するとその重さでかなり摩擦が発生し,上手くスプールが回らずにフィラメントを押し出せないという状況が起こることがあります。
最初に付属していた500gのフィラメントでは問題がなかったのですが,追加でフィラメントを購入して付け替えた際に上記のようなことが起こり,私はスプールホルダーを自作しました。
・スライサーソフトが不便
こちらについては,用途ややりたいことにも左右されるのですが,基本的に3DモデルをCADソフトで製作する,もしくはインターネット上でSTLファイルを入手してきてそのまま配置,印刷という流れであればほとんど困ることはありません。
モデル表面にテクスチャを追加したり,高さによってレイヤーの厚みを変化させるなどの特殊な操作ができないというだけであるとも言えます。
また,UIが綺麗なわけではないため,初めての方は少し操作しづらく感じてしまうかもしれません。
i-mates 補足
マイナーチェンジ前のモデルにi-mateという機種があるのですが,1万円ほどの差額なので余裕があればi-matesを選んでおくことをおススメします。
主な違いはカバーがついているか否かです。
PLAやTPUを印刷する際には保温しておく必要がないので,カバーの必要はありませんが,ABSなどの反りやすい素材を印刷する時には必要となる機能です。
また,使っていない際の保管時にカバーを被せておけば埃やゴミが入ってしまうことを防げます。(地味ですが,周りに筐体フレームがある3Dプリンターは少し掃除がしにくいので,気になる人は気になってしまうと思います。)
販売価格:57,799円(税込)
【Amazonリンク】
初心者におすすめの3Dプリンター【前編】まとめ
以上,すでに組みあがっているFDM方式3Dプリンターのおススメ機種を2つご紹介しましたが,いかがだったでしょうか。ご参考になったでしょうか。
本当は,今回の記事で4機種ともご紹介するつもりでした…。
しかし,それぞれの機種の解説を書いているうちにあまりにも文章が多くなりすぎてしまったので,読みやすさを考慮し,OOTBと組み立て式で前編・後編に分けてご説明することにしました。
3Dプリンターの購入を検討している方は,ぜひ次の記事も読んでいただいたうえで,ご自身にあった機種を選んでいただければ幸いです。
ご質問があれば答えられる範囲でお答えしますので,お気軽にコメントをしてみて下さい。
それではまた後編でお会いしましょう!
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