こんにちは,きー坊です。
3Dプリンターに関する前回の記事は読んでいただけでしょうか。
まだ読んでいないけど基礎情報から知っておきたい,という方はこちらからぜひご覧ください。
基礎的な3Dプリンターの種類や仕組みといった内容に興味のある方,もしくは知識に不安のある方はぜひ軽く目を通してみてください。
さて今回は,3Dプリンターで扱う材料についてお話していこうと思います。
特に,FDM方式(熱溶解積層方式)の3Dプリンターをメインに進めさせていただきます。私自身がもっと光造形方式に詳しくなったら,光造形の3Dプリンターで扱うレジンについても記事を作成するかもしれません。
前回の記事に記載した通り,FDM方式の3Dプリンターでは主にフィラメントと呼ばれる線状の材料を使用して印刷します。
(※マイナーですが,ペレットと呼ばれるプラスチックの粒を溶かして3Dプリントを行う機種もあります。)
実はフィラメントに用いられる素材は日々,改良と開発が進んでおり,新素材も次々と登場しています。さらに,同じ素材の名称でも企業ごとに改良がくわえられており,それらを区別し始めると数えきれないほどの種類があります。
そのため,今回ご紹介するフィラメントの種類については【基礎編】ということでかなり絞っております。今後,徐々に他のフィラメントをご紹介する記事も作成していく予定ですので,ご自身の興味に合わせてご覧いただければ幸いです。
それでは早速一つ目の材料から見ていきましょう。
PLA樹脂(ポリ乳酸)
まず初めに紹介するフィラメント(素材)はPLAです。
こちらのPLAという素材は3Dプリンターを使い始めたら絶対に通る道といっても過言ではないと思います。
理由はいくつかありますが,一言でいえばとにかく扱いやすいからです。ほとんどすべてのFDM方式3Dプリンターで印刷することができますし,成功する条件が比較的緩いという特徴があります。
具体的には以下のような項目が挙げられます。
- 印刷温度が低く,範囲も広い。(180℃-230℃)
- ヒートベッドがなくても印刷できる。
- 反りや収縮が生じにくい。
- 強度が高い。
基本的にはかなり広い用途で用いることができますが,以下のような弱点も存在するので,きちんと把握しておくことで事故が回避できると思います。
- 耐熱性が低く,60℃程度から変形が始まる。
- 靭性が低く,衝撃などが加わった際に割れやすい。
ABS樹脂
ABSはそれぞれ,アクリロニトリル,ブタジエン,スチレンの頭文字から名前が付けられています。
ここでは,化学式などを用いた素材の説明ではなく,あくまで3Dプリンターで使用する時の特徴という部分にフォーカスしてご説明いたします。
分かりやすくPLAと比較する形で特徴を見ていきたいと思います。
温度条件
まずFDM方式の3Dプリンターで外せない要素が印刷温度の条件です。
具体的には,印刷時のヘッド温度とプラットフォーム温度です。
ABSはPLAと比べて高い温度までヘッドを加熱する必要があり,プラットフォームもヒーティングベッドを使用し,ある程度の高温を維持しておく必要があります。
これらが満たされない場合,ノズル詰まりや反りが生じます。
順を追って考えると覚えやすいのですが,
- まず,ABSは印刷に高い温度が必要となります。(210℃-260℃)
- そのため,ヘッドから出た後に急速に冷やされると変形が起こりやすくなります。
- そこで,ヒーティングベッドを100℃付近の温度に設定しておくことで徐々に固まる工夫をしています。
- さらに,雰囲気(周囲の空気)自体も温度が高いほうが良いため,エンクロージャーと呼ばれる3Dプリンターの印刷範囲全体を囲うようなケースがある方が成功率が上がります。
印刷にPLAより高い温度が必要となることから,耐熱性もPLAより高くなります。
反りや変形については原因と解決方法が諸説あり,以下のサイトで詳しく考察されていますので,ご参考までに記載させていただきます。
強度と靭性
簡単に,ここでいう強度と靭性についてご説明しておくと,
強度が大きいほど,引っ張られたときに破壊・破断が起こりにくくなります。
靭性が大きいほど,衝撃を受けたときに割れ・欠けが起こりにくくなります。
強度については PLA > ABS 靭性については ABS > PLA
となることが一般的です。
もちろん,企業努力によって改良されたPLA+などの素材によっては上記の不等号が逆転することもあり得ます。
ABS樹脂まとめ
まとめると,PLAよりも印刷難易度は高いものの,靭性が高いため衝撃に強く,熱変形が始まる温度も高いため,使い場面によってPLAと使い分けると良いといえます。
また,一般に印刷後のサポート材がはがしやすかったり,追加での加工が行いやすいともいわれています。
そして,ABSはアセトンに溶けるため,ノズルが詰まった際の処理としてアセトン溶液につけておくといった選択肢が生まれたり,モデル表面をアセトンで溶かすことで積層痕を減らすことができます。
PETG
PETGは非常に簡単に言ってしまえば,ペットボトルなどに使用されるPETを改良したものです。
もう少し詳しくみてみると,PETに含まれるエチレングリコールの一部をシクロヘキサンジメタノールに置換することで,結晶化を抑制する非結晶の性質を付加した素材です。
3Dプリンターの素材としての性質を簡単にお話しすると,PLAとABSの性質を併せ持ったような性質を持っています。
すなわち,PLAのように印刷が容易で反りが発生しにくいという特性を持ちながら,ABSのような靭性も持っているという素材です。
これだけ聞くと理想的な素材なように思えますが,デメリットとなる部分も存在します。よく出てくる特徴としては以下の2点が挙げられると思います。
- 吸湿性があり,通常の空気中で放置していると素材に悪影響が生じやすい。
- 素材同士の接着性が高いため,サポート材が綺麗にはがれにくい。
一つ目の吸湿性については,少々面倒ではあるかもしれませんが,乾燥機能を持ったドライボックスを利用することで対策することができます。例えば以下の商品のように,ドライボックスに入れながら印刷することができる便利な商品も売られています。
二つ目については,3Dプリンターで印刷したPETGモデルの層間の結合を強くしている特徴でもありますので,大事な特性ともいえます。
そのため,サポート材をあまり必要としないモデルに使用したり,サポート材の付く面の綺麗さは割り切るなどの使い分けが必要になるかと思います。
まとめ:FDM方式の3Dプリンターフィラメント
今回はFDM方式の3Dプリンターで使うことのできる素材の中でも,特に一般的だと思われる3つの素材をフィラメントの【基礎編】としてご紹介しました。
冒頭でもお話ししましたが,3Dプリンターで印刷できる素材は非常に幅広く,柔らかい素材や伝導性の素材,金属を含んだ素材など今回はご紹介しなかったフィラメントもたくさんあります。
ご自身が印刷したいモデルの用途や形状に合わせて適切なフィラメントを選択できるように,様々な選択肢を知っておいていただけると快適な3Dプリンターライフが送れると思います。
こちらのサイトでもご紹介させていただきますが,ご興味が湧いたら,是非いろいろなフィラメントを調べてみてください。
それではまた次回の記事でお会いしましょう。
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